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食について

 

まずは食の改善から始めましょう。

 

いきなりすべてを変えようとすると、大変な方も多いでしょう。

 

そこでまず考えたいのが、「食」です。

 

中国伝統医学では、体は二つの気に由来すると考えられています。

 

 ・先天の気:父母からもらう気
 ・後天の気:食べ物から得られる気

 

中国医学では、この二つの気をとても大切にします。

 

つまり、食物は命を支える大本の一つです。

 

 

食が大切であると、次に気になるのは「何を食べればいいのか」という疑問です。

 

テレビや雑誌、ネット記事では、様々な食材や栄養素に関する情報が溢れています。

 

医食同源という言葉から、薬膳に興味を持つ方もいるでしょう。

 

 

しかし、まず大切なのは、「何を食べないか」を考えることです。

 

犬や猫でも調子が悪い時は食べません。人間だけが無理して食べようとするのです。

 

食べ過ぎで病気になっている人の方が圧倒的に多いのです。

 

 

江戸時代の貝原益軒先生は、『養生訓』で以下のように説いています。

 ・食べ過ぎると脾胃を傷つけ、諸病を引き起こす

 ・少しの量を食すると、脾胃に隙間ができ、気が巡りやすくなり消化がしやすくなる
 

 ・珍しく美味しいものを食べる時は、腹八九分にてやめるべきだ。腹いっぱい食べると後々禍となる

まずは食べることよりも、何を食べないかをよく考えることが大切です。

 

東北大学医学部衛生学教室教授の近藤正二先生著『日本の長寿村・短命村』という本があります。

 

近藤先生は、日本の津々浦々、990ヶ所の長寿村と短命村を調査し、長寿と短命の原因を探りました。

 

その結果、長寿と短命を分ける一番の原因は、「食習慣」であることが判明しました。

 

しかし、テレビでよく言うようなスーパーフードは存在しません。

 

本の内容を詳しく述べることはしませんが、簡単にいうと次のようになります。

 

長寿村
 ・かぼちゃ、人参などの緑黄色野菜、海藻をよく食べる
 ・大豆たんぱくをしっかり取る

 

短命村
 ・魚、肉、米を多く取り、野菜をあまり食べない
 ・単一のものを多く食べる

 

足で稼いだ経験がここにはあります。

 

『日本の長寿村・短命村』近藤正二著をお読みいただくことをおすすめします。

 

 

甘いもの、脂っこいものは万病のもとです。
 

現在、どこに行っても様々なスイーツが目に飛び込んできます。

 

甘いものは人を魅了し、怒っている人でも甘いものを見れば笑顔になるものです。

 

アリが砂糖に群がるように、動物や昆虫も甘いものが好きです。

 

甘いものには何とも言えない不思議な魅力があります。

 

しかし、習慣性が強く、摂り過ぎは考えものです。
 

 

東洋医学では、甘いものをとり過ぎると脾(現在の膵臓、消化器系統)を傷めると考えられています。

 

甘いものをとり過ぎると脾が弱り、身体の水液の流れが悪くなり、滞ります。

 

水液の滞ったものを痰飲といい、口から吐く痰だけでなく、もっと幅広く体内の水液の滞った物質を指します。

 

この痰飲は身体の気や血のスムーズな流れを阻害し、怪病多痰と言われるように、水液の滞りは奇病を引き起こすことが多いと言われています。
 

 

『日本の長寿村・短命村』の著者、近藤正二先生が調査のために志摩の海女を訪ねた時、お土産にお菓子を持っていきました。

 

その海女は美味しそうに一つだけ食べたあと、二つめには手をつけませんでした。

 

「なぜ食べないのか」を近藤先生がたずねると、

 

「甘いものを食べ過ぎると潜るのがしんどくなる」という答えが返ってきました。志摩の海女は身をもって甘いものの欠点を知っていたのです。
 

 

脂っこいものも好む人が多いですが、脂っこいものも摂りすぎると東洋医学では肝に負担をかけると考えられています。

 

肝は血管が多く、血が多いので、東洋医学では肝は血流量の調整をすると考えられています。

 

肝に負担がかかると血の流れに滞りが生じ、この滞った血を瘀血といいます。血は固まりやすいので、この瘀血は厄介者です。

 

難病の原因はこの瘀血であるとも言われ、脂っこいものをとり過ぎると瘀血が生じ、難病になりやすくなります。

 

油で揚げたものや肉や魚の摂りすぎ、脂ものではないがお酒の飲み過ぎも瘀血を生むので注意が必要です。
 

 

糖分も油脂も人体を構成する成分としてとても重要なものです。

 

取らないのも問題ですが、現在の飽食の時代には、摂りすぎになるきらいがあります。

 

様々な甘いもの、ハンバーガー、フライドポテト、ポテトチップス、肉や魚の摂りすぎには注意しましょう。

 

 


『粗食のすすめ』 幕内秀夫著 新潮文庫の食事療法

 

幕内秀夫さんはホリスティック医学を目指した「帯津三敬病院」で管理栄養士を務めています。幕内秀夫著『粗食のすすめ』新潮文庫からの抜粋です。


食源病を防ぐ10箇条

 

①ご飯はきちんと食べる
ご飯は食生活の土台。ご飯が少ないと、つい甘い菓子類などの間食をしたくなってしまう。その上、パンはご飯と違って砂糖や油脂、食品添加物が入っているものがほとんどだ。また、副食も油ものやス食肉加工品などになりがちである。主食はパンではなくご飯をきちんと食べるようにしよう。

 

②穀類は未精製のものに
ご飯は胚芽米、分つき米、玄米、雑穀など、未精製のものにしよう。特に胚芽米が一般的だ。食べた感じが白米に近いし、普通の電気炊飯器でも炊ける。スーパーマーケット、米屋など、どこでも手軽に手に入る。
※胃腸が弱い人は玄米や、分つき米が合わない時があります。(byりょうてん)

 

③副食は野菜中心にする
 副食は季節の野菜、海藻、芋類、キノコ類を中心とする。冬場の生野菜などは好ましくない。必ず動物性食品より、野菜を多く食べるように心がけよう。

 

④醗酵食品を食べる
 みそ汁、漬物、納豆などの醗酵食品は毎日食べるようにしよう。できればきちんと醗酵させた質のよいものを選びたい。ただ、塩分はあまり濃すぎないように注意したい。

 

⑤肉類を減らす
 肉(牛、豚、鶏など)、食肉加工品(ソーセージ、ハム、ベーコン、コンビーフなど)はなるべく減らし、動物性食品は魚介類や卵くらいにする。

 

⑥揚げ物は控えめに
 天ぷら、フライ類はできるだけ控えよう。揚げ物は油脂類のとり過ぎが心配である。油脂類は、炒め物やドレッシングからとるくらいにしよう。

 

⑦白砂糖の入った食品は避ける
 白砂糖の入った菓子類(クッキJ、ケーキなど)、飲料水(乳酸菌飲料、清涼飲料、炭酸飲料など)はとらないようにしよう。

 

⑧砂糖や塩は未精製の物を使う
 白砂糖は使わない。甘味は黒砂糖、三温糖、ハチミツ(一歳以下の子どもは避ける)などのほか、みりん、日本酒などでつけるようにする。塩も未精製でニガリが含まれているものを使うようにする。

 

⑨できるかぎり安全な食品を選ぶ
 あまり神経質になる必要はないが、できるかぎり安全な食品を使うようにしよう。せめて、醤油、みそ、塩、砂糖、みりんといった基本的な調味料くらいはよく吟味して、質のよいものを使いたいものだ。

 

⑩食事はゆっくりよく噛んで
 食事はゆっくりとよく噛んで食べる習慣をつけよう。噛むことは、単に食物を細かくするだけにとどまらず、歯ぐきを丈夫にしたり、脳の血流をよくするなど、さまざまな有効作用があるのだ。

子供の食生活改善10箇条

①ご飯をしっかり食べる
何よりもご飯をしっかり食べることが大切である。ご飯をしっかり食べさせないと、甘い菓子類などをほしがるのは当然だ。また、ご飯を主食にすれば副食もそれほど悪くはならない。ふりかけをかけてもいいし、おにぎりでもいい。しっかり食べさせてほしい。

②飲み物で満腹にしてはいけない
生まれたばかりの赤ちゃんは歯がないから、母乳で満腹にする必要がある。しかし、歯の生えた子供は液体で満腹にしてはいけない。液体で満腹になってしまうときちんと食事ができなくなってしまうのだ。特に清涼飲料水、炭酸飲料、乳酸飲料、牛乳などは良くない。飲ませるなら、水や麦茶、番茶、ほうじ茶、野草茶など食事に影響を与えないものにしよう。100パーセント果汁、豆乳などもほどほどに。

 

③パンの常食はやめる
パンはよほど注意して選ばないと、砂糖、油脂類、添加物だらけだ。つまり甘味の少ない菓子のようなもの。それだけではない。パンには、ジャム、マーマレード、バター、マーガリンなどを塗り、副食は季節に関係なくサラダが合う。サラダにはマヨネーズ、ドレッシングをかけることになるだろう。もう一品つけるとすれば、目玉焼き、ハムエッグといったところだろうか。パンにはほうれん草のお浸しも、目刺しもあわない。

 

④おやつは主食に近いものを優先する
子供は成長や運動量に見合うだけの食事を三回でとることができない。そのため間食が必要になるのだ。しかし、あくまでも間の食事だ。したがって、できる限り主食に近いものを選ぶことが大切である。穀類や芋類がベスト。おにぎり、もち、じゃがいも、焼芋、とうもろこし、そば、うどん。そして、せんべい。くるみ、甘栗、果物、ドライフルーツ(干し柿、干しぶどう)。甘い菓子類は極力避けるべきだろう。

 

⑤未精製の穀類にする
ご飯はできれば胚芽米、分搗き米(三分、五分、七分)などにしよう。とくに、胚芽米が一般的である。食べた感じも白米に近いし、普通の電気炊飯器でも炊ける。
※胃腸が弱い人は玄米や、分つき米が合わない時があります。

 

⑥副食は季節の野菜を中心にする
副食は季節の野菜、海藻、芋類、きのこ類を中心とする。必ず、動物性食品よりも多く採るように心がけよう。冬場の生野菜(トマト、レタス、キュウリ)は好ましくない。

 

⑦発酵食品をきちんと食べる
味噌汁、漬物、納豆などの発酵食品は常食するように心がけよう。できれば、きちんと発酵した質のいいものを使いたい。ただし、塩分は濃すぎないように注意しよう。

 

⑧肉よりも魚介類にしよう
肉(牛、豚、鶏など)、食肉加工品(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)は極力食べないようにしたい。動物性食品は魚介類や卵などにしよう。ただし、魚もとらないなどという菜食主義は間違っている。冷静に考えよう。

 

⑨揚げ物は控えめにする
現代の食生活は油脂類が非常に増えすぎている。てんぷら、フライ類は控えめにしよう。油脂類は炒めもの、ドレッシングくらいにおさえる。スナック菓子、ドーナツなどは避けるようにする。

 

⑩食事はゆっくりとよく噛んで
食事はゆっくりとよく噛んで食べる習慣をつけよう。噛むことは、食物を細かくするだけではなく、歯ぐきを丈夫にしたり、脳の血流をよくしたりといった様々な有効な働きをするのだ。
(『粗食のすすめ』 幕内秀夫著 新潮文庫より)

 

幕内秀夫さんのご著書を読んで参考にしてください。


現代医学からみた食事療法
 

『食事療法ハンドブック 』第1版 第2刷 https://www.japha.jp/doc/byoki/series040n.pdf

中間法人日本臨床内科医会 学術部編より抜粋しました。

 

食事療法を始める前のチェックリスト
■欠食が多い…1日2食だと食べすぎや間食を招く。1日の合計摂取エネルギーが同じでも太りやすい。
■満腹にならないと食べた気がしない…「腹八分」は江戸の昔からの健康法。基本中の基本。
■夕食の量が多い。夜食をとることが多い…睡眠中はエネルギーが消費されずに貯蓄に回り、太りやすい。
■野菜ぎらい…野菜は低エネルギーで食物繊維の宝庫。ほとんどの食事療法に適した食材(例外もあり)。
■脂肪の多い料理が好き…揚げ物などの脂肪が多い料理はエネルギーが高く、肥満になりやすくなる。
■食べるのが早い…早く食べるほど、食べる量が多くなり太りやすい。
■外食の機会が多い…外食は一般的に脂肪や塩分が多い。
■間食をしたり清涼飲料水をよく飲む…栄養バランスが崩れ、しかも摂取エネルギー過剰になりやすい。
■アルコール飲料をたくさん飲む…食事のバランスが崩れ、摂取エネルギー過剰になりやすい。
 
エネルギーカット◯秘 テクニック
●肉料理の際は、最初に湯通ししたり、網焼きにして、肉の脂を落とす。フッ素樹脂加工のフライパンを使うと調理油が必要ない。
●サラダには低エネルギーのドレッシングやマヨネーズを。「ノンオイル」と書かれていても、意外にエネルギーが高いことがあるので、ラベルを見て確認する。
●小腹が減ったらプチトマトやキュウリ、低エネルギーに調整されているお菓子を食べる。食事の間隔が長くあくときは途中で軽く食べたほうが、次の食事の食べすぎを防げることが多い。
●調理に低エネルギーの調味料などを適宜利用する。
●たくさん食べたいメニューは、夕食ではなく昼食に。
 
 
ホント?ウソ? あなたの“常識”再チェック!
・野菜のかわりに果物…× 果物は糖分たっぷりで野菜とは別。血糖値や中性脂肪値が高いときは適量を守る。
・野菜はたっぷり食べるとよい…▲ 多くの方には●だが、腎臓病やワルファリン(抗凝固薬)を服用中の方は注意が必要。カリウムが多い青汁(ケール)、ビタミンKが多いクロレラなどは要注意。
・海藻はエネルギーがないのでいくらでもOK…▲ 多くの方には●だが、甲状腺の病気の患者さんは、ヨウ素の多いコンブなどに注意。また、塩分が多い点にも配慮を。
・サプリメントでより健康に…▲ 大量にとるのはからだにとって不自然。薬との飲みあわせの心配もあるので、最初に医師に相談を。
酒は百薬の長…▲ アルコールはエネルギーばかりで栄養がない“空のエネルギー”。医師の指示を守ること。
★これら以外にも、テレビで「○○はからだによい」という情報が流れると、そればかり食べる人が出てきます。そういった‘健康情報’を鵜呑みにせず、まずは医師や栄養士、薬剤師に相談してください。
 
発行:中間法人日本臨床内科医会
     〒101-0062
     東京都千代田区神田駿河台2-5 東京都医師会館3階
     TEL.03-3259-6111 FAX.03-3259-6155
編集:中間法人日本臨床内科医会 学術部
後援:キユーピー株式会社
     〒150-0002
     東京都渋谷区渋谷1-4-13
     TEL.03-3486-3252 FAX.03-3486-4640
食事療法ハンドブック 第1版 第2刷
2008年2月発行

https://www.japha.jp/doc/byoki/series040n.pdf

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